メグロの孤独日記

孤独な哲学科の大学生です。

ゴキブリ戦記〈その3・終〉

それからゴキブリは数回でた。

 

ようやくゴキブリスプレーを購入し、ゴキブリを倒したことがあるという経験を得た私はもう何も怖いものはなかった。

 

では、また彼に遭遇した昨年の8月について話そうと思う。

 

その日はYouTubeでゲーム実況の動画を見ながら夕食をとっていた。

 

やはり私の部屋はベッドの下から出る確率が高い。今回もそこから出た。

今夜は大物だ。

 

本当は今すぐスプレーを噴射したいところだったが少し疲れていたため

「そのうち消えるだろう」

と、消えるわけがないのに放ったらかしにしていた。

その時はまだ私はゴキブリのことを嘗めてかかっていた......。

 

風呂上がりにゴキブリがいないか確認したところ、すっかりいなくなっていたため胸を撫で下ろして今日が終わった。

 

2日が経った日の夜、私は優雅にベッドの上に座って読書をしていた。

ゴキブリのことなどとうの昔に忘れていた。

 

ここからが本章。

 

読んでいたSF小説もクライマックスにさしかかったころ、右肩からカサコソと微かな音が聞こえた。

何かゴミでも乗っかったのだろうと思い、音の正体を手にとってしっかりと握りこんだ。

 

目の前で手を開く。

 

その瞬間、起きた現実が信じられず頭が真っ白になった。

 

私の手のひらで黒く光るゴキブリが鎮座していたのだ。

 

2、3秒たち、意識を取り戻すと今起きている状況に慄いた。

 

隣人もびっくり!なほど大きな叫び声をあげながら、手に持っているものを床に叩きつけた。

これはきっと2日前のと同じだろう、あのとき倒さなかった自分を恨んだ。

もう過ちは犯すまいとスプレー缶を手に取り撃退した。

 

事は終えたが、まだゴキブリを素手で持った事実を信じる事はできなかった。

 

とりあえずほんの続きを開き、読み続けているうちに心が落ち着いてきた。

さっきのことを思い返し、現実だと理解するとなぜか無性に笑いがこみ上げてきた。

これを自分の武勇伝にしたい。

 

この経験を通して、私はまたひとつ強くなった。

私のゴキブリ戦記〈その2〉

そのまま眠ってしまい目が覚めたのは朝5時ごろだっただろうか。

 

寝る前のことは記憶に残りやすいと受験期に聞いたことはあるがこういうことかと今更ながら気づかされる。起きた瞬間昨晩の恐怖を思い出したのだ。

 

記憶がフラッシュバックしひどく身震いしたが、意を決してラーメンの器を覗いてみることにした。

 

緊張したが勇気を出してちらりとみる。

 

......なんと。

 

なんとなんと。

 

小さい奇跡は起こるものだ。

彼は私が昨日の夜に食べたラーメンに飛び込んでいた。

私は浮き輪を浮かべる日曜日よりの使者THE HIGH-LOWS の曲をパクった)にはならず、この奇跡をおおいに喜んだ。

 

自分自身が手を下すことなく彼はダイブしてくれた。

私はやっていない。私は無実だ。

と、嬉しさで朝っぱらから役者ごっこをしていた。

 

おなくなりになったゴキブリの前でひと通り酔いしれて我に返り、ラーメンを処理しなければいけないことに気づく。

ビニール袋に入れ、できるだけ汁を抜いて、きちんと先を結びゴミ箱に入れ、フィニッシュした。

 

というのが初めてのゴキブリとの戦いである。

 

まだ続く。

私のゴキブリ戦記〈その1〉

今回は我が部屋で繰り広げられたこれまでのゴキブリとの戦いをここに記す。

 

ゴキブリを一人で倒せないそこの貴方、必見。

 

大学に入学し、一人暮らしをのうのうと楽しんでいた一回生の夏、ついに彼と対面する日がやってきた。

 

その日の夜は一人暮らしの醍醐味のひとつである夜食のラーメンを部屋で堪能していた。

「おいしいなあ。おいしいなあ。」と味わっていたそのとき、ベッドの下で何かが動いた。

 

その何かは凝視しなくとも正体がわかった。

正体を理解した瞬間、素敵な「おいしいなあ。おいしいなあ。」の感情が「恐いなあ。恐いなあ。」に変わってしまった。

 

いつかそのときがくるのはわかってはいたが、まだ心の準備もゴキジェットの準備もできていなかった。

いつも冷静沈着なこの私、このときばかりはパニックに陥った。

 

とりあえず心を落ち着かせるためにYouTubeで「ゴキブリ 出た」と検索し、各YouTuberがゴキブリと奮闘している動画を狂ったように見まくった。

見ているうちにだんだん心の奥から希望と勇気が湧いてきた。

 

何を思ったのか、私はさっきまで食べていたラーメンの残りが入った器をゴキブリの前に差し出した。

そして、ベッドの上で目を閉じた。

 

続く。

これ以上眼鏡壊したら許さないからな

私の通っていた小学校の(どこも同じかもしれないが)長い休み時間には、みんな外で遊ぶのが当たり前だという風潮があった。

 

生徒それぞれ教室から出て行き、自分の遊びたい遊具のところへ行き各々遊びに励んでいる。

 

私はブランコや鉄棒に興味はあったが、遊んだ後に必ず手が鉄臭くなってしまうためいつも断念していた。

当時、歯が抜けて血(鉄分)の味がするといつも貧血をおこしていたくらいだから、それほど鉄が苦手だった。

 

なので、しぶしぶドッジボールに参加していた。

 

ただドッジボールに良い思い出はない。

小学生のガキは残酷で、容赦無く純粋無垢な乙女の顔面にボールをぶつけてくる。

私はメガネっ子だったため顔面に当たると高確率でフレームが曲がる。

これじゃあお嫁に行けないじゃないの。

まあでも、ドッジボールとはそういうものなので仕方がない。

(幸いなことにレンズが割れることはなかった。)

 

しかし何度眼鏡に傷をつけられても、その頃の私は宮沢賢治の『雨ニモマケズ』をバイブルとしていたため決シテ瞋(怒)ラナカッタ。

 

そして、家に帰って母親に眼鏡の傷を伝え眼鏡屋さんに連れていってもらうのが常であった。

ちなみに母親も眼鏡をかけている。

さらに父親も眼鏡をかけている。

 

雨ニモマケズ』をバイブルにしていたとはいえ、眼鏡を直してもらう最中こう思っていたのであった。

 

「これ以上眼鏡壊したら許さないからな。」

 

と。

 

 

コールセンターのバイト、一週間で辞めちゃった

私は金の亡者だから、大学一回生のとき入学してすぐにアルバイトを探した。

 

ちょっと周りと違うことがしたくてたまたまタウンワークで見つけたタクシーのコールセンターのアルバイトに応募した。時給千円越え。胸が踊った。

 

そして面接当日、寝坊した。

 

タクシーのコールセンター会社へタクシーを使って急いで向かった。

 

お金を稼ぐために面接に向かうはずなのに無駄金を使ってしまった。

 

到着し、小さなビルの3階に連れられ少し話したらすぐに採用された。

遅刻した理由を「道に迷った」と嘘をついたためかあまり気にされなかったようだ。

 

初出勤時に業務の内容を知らされた。

タクシーを利用したい客からの電話を受け、名前や行き先などを入力し運転手に情報を送るという。

 

社員さん曰く「超簡単なお仕事だよ」というが、私にとっては慣れない仕事であった。

いざ仕事を始めてすぐにコールセンターの業務は向いていないと察知した。

 

まず、耳が遠いため客の言っていることがまったく聞き取れない。

単純に耳が遠いからというわけではなくて、イヤホンのノイズや周りのパソコンのキーを叩く音、いろんな音と混じって聞き取れなかった。

さらに新しい場所に引っ越してきたばかりだったため地名もちゃんと把握できていなかった。

 

もう一つ、滑舌が悪すぎて客に聞き取ってもらうこともできなかった。

そもそも自分の名前で噛んでしまう時点でもうだめだ。

 

聞き取れない、そして聞き取ってもらえない。これではコールセンターの仕事は務まらねい。

こんなことがあって一週間でアルバイトを辞めてしまったのだ。

 

もちろん今は別のアルバイトでがっぽり稼いでいる。

 

自分の耳と舌の不良さに落ち込む大学一回生の春であった。

持って帰ってください

夏の真昼間、目的もなく一人でぶらぶらしていた。

 

 小さな路地に入っていくと、人が住んでいるかわからないような家の前に机が一つ置かれていた。

机の上には小さな女の子がかつて使っていただろうおままごとの道具やおもちゃが無造作に散らばっていた。

 

 今なんていらないものがあればメルカリで出品したらお金儲けできるのに、こんなところに置いて貰い手なんか現れるのだろうかと考えながら、まじまじとその並べられたおもちゃを見ていた。

 

 中にはお手玉など、昔自分も使っていたおもちゃもいくつかあって「ああ、あんなことしてよく遊んだなあ。」と幼児時代にふけっていた。

 

 ふと机をよく見てみると小さな紙切れがあった。

  

「持って帰ってください」

 

綺麗な字でこう書かれていた。

「持って帰んないよ〜」

とつっこんでおいた。

 

 まあこれも話のネタにでもなるだろうと思い写真を撮ろうとしたそのとき、

何も触ってもいないのに、置かれてあった音の出る絵本から曲が流れ始めた。

 

 愉快な音楽であったが、私はびっくり仰天してその場から一目散に逃げた。

一体なんだったのだろうか。

 

 夏の暑さで絵本がバカになってしまったのか。

はたまた「写真を撮るな」と、見えざる何かからのメッセージだったのか。

 

 

 真相は闇の中である。

 

 ......。

 

 たいした話ではないが、夏なのでホラーっぽく書いてみた。

多分おばけじゃない、風か何かに反応してしまっただけだろう。

 

 

 

 

 

こだわりが強すぎる

私の性格の一つに「こだわりが強すぎる」という性質がある。

 

 この性質には若干生活に支障をきたすことがあって、それは物事を決めることに時間がかかりすぎることだ。

 

 絶対これが良い、これしかないと思うまで吟味し続ける。

 

 が、これがまあ時間の無駄ではないかとしばしば思う。

 

 効率よく直感で決めてしまいたいと思うが、この性質はもう治らないと半分諦めている。

 

 気を取り直して、今回は私のこだわりの一つである、生理用ナプキンについて語りたいと思う。

 

 生理用ナプキンの有名なメーカーに「ソフィ」「エリス」「ロリエ」がある。

 

 私は「ロリエ」を愛用している。

 

 なぜなら名前の言葉遊び?がなかなか面白くて

ロリエ→月桂樹→月桂→月経

と考えることができる。

 

 「ロリエ」の公式ホームページを見てみると

「ロゴのモチーフになっているのは、寄り添う2枚の月桂樹(ロリエ)の葉です。

古来より、勝利者に与えられる冠に用いられてきた月桂樹。

『すべての女性が女性であることを誇らしく思ってほしい』というロリエの発売以来ずっと変わらない想いが込められています。」

とある。

 

 月桂樹と月経がかけられているのかどうかはわからずじまいであったが初めてホームページの文章を読んだ時、「勝利」の二文字に心打たれ、私は生涯「ロリエ」を使い続けることに決めた。

 

 憂鬱な一週間、ナプキンを使うたびに私は「勝利するのだ」と前を向く。(「何に勝利するの?」とは聞かないで。)

 

 格好良いと思った。

 

 夏目漱石が好きだから『エリス』を使ってるんだよ」というもの文学少女っぽいな、と一瞬頭によぎったが。

 

 以上、生理用ナプキンのメーカーを決めるだけなのに無駄に時間がかかりすぎる人の話であった。