これ以上眼鏡壊したら許さないからな
私の通っていた小学校の(どこも同じかもしれないが)長い休み時間には、みんな外で遊ぶのが当たり前だという風潮があった。
生徒それぞれ教室から出て行き、自分の遊びたい遊具のところへ行き各々遊びに励んでいる。
私はブランコや鉄棒に興味はあったが、遊んだ後に必ず手が鉄臭くなってしまうためいつも断念していた。
当時、歯が抜けて血(鉄分)の味がするといつも貧血をおこしていたくらいだから、それほど鉄が苦手だった。
なので、しぶしぶドッジボールに参加していた。
ただドッジボールに良い思い出はない。
小学生のガキは残酷で、容赦無く純粋無垢な乙女の顔面にボールをぶつけてくる。
私はメガネっ子だったため顔面に当たると高確率でフレームが曲がる。
これじゃあお嫁に行けないじゃないの。
まあでも、ドッジボールとはそういうものなので仕方がない。
(幸いなことにレンズが割れることはなかった。)
しかし何度眼鏡に傷をつけられても、その頃の私は宮沢賢治の『雨ニモマケズ』をバイブルとしていたため決シテ瞋(怒)ラナカッタ。
そして、家に帰って母親に眼鏡の傷を伝え眼鏡屋さんに連れていってもらうのが常であった。
ちなみに母親も眼鏡をかけている。
さらに父親も眼鏡をかけている。
『雨ニモマケズ』をバイブルにしていたとはいえ、眼鏡を直してもらう最中こう思っていたのであった。
「これ以上眼鏡壊したら許さないからな。」
と。